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政治制裁は外交断絶、国際機構からの追放、スポーツ・文化交流の停止などであり、経済制裁は貿易や投融資の禁止などである。
西欧のなかでいち早く制裁に動き出したのはフランスである。フランスは南ア国内での権益が少ないせいもあって、85年7月、駐南ア・フランス大使の召還や新規投資の凍結を決定し同時に国連安保理事会の制裁を働きかけた。
米国では85年6月、下院が輸出の全面禁止、企業・投資の撤退、南ア航空機の米国内着陸禁止を骨子とする制裁法案を可決した。上院も新規投資やウラン、石炭の輸入禁止などの制裁を決めた。
85年8月開催の英連邦7カ国首脳会議では、英国を除く6カ国が航空路断絶、農産物やウランの輸入と新規銀行借款の禁止を含む広範な制裁を決めた。
かくして、南アでは外国企業の撤退、投資の引き揚げが相次ぎ、白人の国外脱出も急増しており、南アに対する経済制裁の強化を求める声ば国際的に高まる一方である。
先進工業国にとって当面の最大関心事は、南アが制裁参加国の先端技術を支える希少鉱物資源の輸出停止などの報復に踏み切りかねないことである。
米国の南ア資源への依存度はクロムが55%、プラチナが49%、バナジウムが44%などと高く、日本の対南ア依存度もバナジウム72%、クロム57%など極めて高い。
わが国は、対南ア投資の禁止に加えて、85年10月南アの軍・警察向けコンピューターの輸出を禁止し、さらに鉄鉱石、石炭の輸入停止を含む追加制裁の検討を始めた。しかし、関係当局の姿勢は米、英両国などの動きを見定めたうえで協調するというもので、自主性が見られない。
南アの主な貿易相手国は、85年の総貿易額では米国(約28億7,000万ドル)を筆頭に西独、日本、英国の順であるが、3位の日本(約23億8,400万ドル)と2位の西独との差は僅か400万ドル、日本は南アからの輸入額では米国に次いで2位である。
外国の対南ア投資は約170億ドル(83年末現在)で、英国の91億ドルが群を抜いている。

 

 

 

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